兵庫県西宮市で社会保険労務士を務める正岡です。 本日は同一労働同一賃金の改正についてご案内します。
私たちは人事労務顧問だけでなく、社長の皆様や社員の皆様にコーチングの観点を用いた研修を実施します。
会社のカルチャーや思想から労務制度の実装までを一気通貫でご支援します。
同一労働同一賃金の改正を踏まえた対応も含みます。
今回は2026年10月ガイドライン改正、同一労働同一賃金について解説します。
2020年4月、パートタイム・有期雇用労働法により大企業から同一労働同一賃金への対応が始まりました。
(中小企業は2021年4月から)
今回のガイドラインの改正は、法律施行後にさまざまな最高裁判例も出揃ったことで、新たにルールとして明文化しようという背景があります。
今回は、
- 同一労働同一賃金とは何か
- ガイドライン改正で何が要求されるのか
- 改正に向けたアクションプラン
をご紹介します。
同一労働同一賃金とは?
パートタイム・有期雇用労働法では、同一企業内の正社員とパートタイム・ 有期雇用労働者との間で、待遇(基本給や各種手当、福利厚生など)について不合理な差を設けることを禁止しています。
これを、スローガンとして「同一労働同一賃金」と呼んでいます。
例えば、年末年始でも変わらず営業している小売店があるとします。
正社員には年末年始に出勤した場合、「年末年始に出勤してくれてありがとう」という意味を込めて出勤日数×5000円の年末年始手当を支給しています。
一方で、パートさんには支給していません。
この待遇差に、「意味があるなら合理的な理由があるはずだ」「パートさんだから支給しないというのは不合理だ」というのが同一労働同一賃金の考え方です。
パートタイム・有期雇用労働法で述べている観点
同一労働同一賃金では「均等待遇」「均衡待遇」という観点があります。
均等待遇とは?
均等待遇とは、「同じ待遇なら同じ取り扱いをしなければならない」という意味です。
根拠となる、パートタイム・有期雇用労働法第9条には以下のように記載があります。
事業主は、職務の内容が通常の労働者と同一の短時間・有期雇用労働者であって、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれるもの(「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者」という。)については、短時間・有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、差別的取扱いをしてはならない。
- 職務の内容が「通常の労働者と同一の短時間・有期雇用労働者」であって
- 職務の内容/配置が
- 「通常の労働者と同視すべき」短時間・有期雇用労働者であれば
基本給・賞与その他の待遇について、差別的取り扱いを「してはならない」となっています。
例えば、能力が高くほとんど正社員と同じような働き方・職務内容をしているのであれば、正社員と同様の賃金や福利厚生を準備しなければならないということです。
このような、長期的にみて「正社員と何ら変わりはない」という非正規社員には、均等待遇が要求されます。
均衡待遇とは?
均衡待遇とは「正社員と非正規社員を比較して、業務等の違いがあるならそのバランスに応じた待遇にしなければならない」ということです。
極端に非正規社員が不利益すぎるとそれを是正してくださいということ。
根拠となる、パートタイム・有期雇用労働法第8条には以下のように記載があります。
事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。
- 基本給・賞与その他の待遇に対しそのそれぞれで
- 職務の内容(業務内容やその業務における責任レベル)/職務内容・配置の変更範囲(異動の可能性、役職登用の可能性)が同じ
- 待遇の性質や目的を考慮して
短時間・有期雇用労働者と不合理な差を「設けてはならない」となっています。
例えば、財務や経理を担う部署で、
- 正社員→財務諸表から経営分析を行い、財務の観点から経営を支援する業務
- 非正規社員→ひたすら仕訳を入力する
という、同じ部署でも業務内容に違いがある場合は、この違いに応じた合理性の範囲内で賃金や待遇を調整するのはOKだが、「不合理な」差を設けてはならないとなっています。
このように、「待遇に違いを設けるなら、説明できてほしい」が均衡待遇の肝です。
均衡待遇や均等待遇が整理できたとして
このように、均衡待遇や均等待遇が整理できたとしても、現実に法律の内容が抽象的すぎて整理するのが難しいですよね。
例えば、
- 正社員→営業で顧客対応をする
- 非正規社員→営業事務を行う
のような区別があればまだしも、
正社員も非正規社員も営業事務を行う
という状況で「非正規社員には賞与を支給しません」という場合、会社側は区別あると主張し、社員側は区別がないと主張することがあり得るでしょう。
このように、現実に運用する上でどのようなものであれば均等待遇や均衡待遇が取れているのかが明確ではないことに悩みがありました。
ですが、著名な最高裁判例により、整理されてきたことで、今回ガイドラインとして明記される運用に変わりました。
ガイドライン改正で変わること
同一労働同一賃金の著名な最高裁判例は以下のとおりです。
※前提として、一概に「賞与は待遇差があっても良い」という判断ではなく、会社の賞与等の意味目的等に照らし合わせた判断であることをご理解ください。
| 事件名 | 争点になったもの | 結果 |
| ハマキョウレックス事件 | 通勤手当 皆勤手当 無事故手当 休職手当 | 契約社員と正社員で待遇差を設けることは不合理である (詳細は判例をご確認) |
| 大阪医科薬科大学事件 | 賞与 | アルバイト社員への賞与の不支給は不合理とは言えない (詳細は判例をご確認) |
| メトロコマース事件 | 退職金 | 契約社員の退職金の不支給は不合理とは言えない (詳細は判例をご確認) |
| 日本郵便事件 | 扶養手当 年末年始勤務手当 夏季休暇・冬季休暇 病気休暇 | 非正規社員との間に待遇差を設けることは不合理である (詳細は判例をご確認) |
こちらの内容をもとに、2026/10/1より、同一労働同一賃金のガイドラインが改正されます。
変更点①:労働条件の明示事項が1つ増える
パート・有期の方を雇い入れるとき、労働条件通知書などで「待遇の相違の内容および理由等について説明を求めることができる」旨を明示することが必要になります。要は、「不満があったら説明を求めていいですよ」と会社側から先に伝える義務です。
パートタイム・有期雇用労働者むけの絶対的明示事項
- 昇給・賞与の有無
- 退職金の有無
- 短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る
- 通常の労働者との間の相違等について理由を求める旨の窓口の設置・記載←New!!
変更点②:最高裁判例をもとにした手当や福利厚生の扱いの明記
上記の最高裁判例で議論された賞与や退職金を含め、他手当や福利厚生の扱いについて明記されました。
賞与・退職手当
賞与や退職手当(退職金)の支給目的に照らし合わせて、目的に該当するにもかかわらず正社員と非正規社員で待遇差が生じる場合は、同一労働同一賃金の観点から、不合理と認められる可能性があります。
家族手当
契約更新を繰り返しているなど、相応に継続的な勤務が見込まれるパート社員・契約社員には正社員と同一の家族手当を支給しなければなりません。
福利厚生施設
福利厚生施設の利用や使用費用については待遇差を設けてはいけません。
夏季休暇・冬季休暇
パート社員・非正規社員にも同一の休暇を付与しなければなりません。
褒賞
永年勤続表彰などのように、一定期間の勤務に対する褒賞はパート社員・契約社員にも同様に付与しなければなりません。
なお、これらの待遇の相違等を説明する場合は、口頭だけでなく資料を用いて説明することを要求しています。
今日からできるアクションプラン
では、実際にアクションすべき内容は何なのか?を順に記載します。
1. 待遇の棚卸し表をつくる
正社員/契約社員それぞれについて、基本給・賞与・退職金・各種手当・休暇を縦に並べ、「有無」と「金額・日数」を横に書き出す。まずは可視化がすべての入り口です。
2. 差の一つひとつに「理由」を書き込む
各差の欄に、「なぜこの差があるのか」を一文で書く。職務の内容・責任・配置変更の範囲の違いで説明できるか。ここで手が止まる項目が、あなたの会社の弱点です。
3. 手当と休暇を最優先で点検する
判例で不合理とされやすいのは、通勤・皆勤・無事故・給食・作業・家族(扶養)手当、年末年始勤務手当、夏期冬期休暇、病気休暇、慶弔休暇。ここから先に潰します。
4. 労働条件通知書を2026年10月様式へ差し替える
「待遇の相違の内容・理由等について説明を求めることができる」旨を追記した様式に更新し、10月以降の雇入れから使う。
具体的には、労働条件通知書に以下の項目を追加。

5. 「説明を求められたとき」の回答メモを用意する
主要な手当ごとに、差の理由をあらかじめ短文で書いておく。求められてから慌てないための備えであり、説明時に資料を用いて説明することが要求されるからです。
6. 就業規則・賃金規程の支給要件を書き換える
手当の支給要件を「正社員だから」ではなく「この職務・この貢献だから」で定義し直す。ここまでやると、説明責任が制度側に埋め込まれます。
7. 情報公表を検討する
正社員転換制度の有無や実績、教育訓練の状況を整理し、自社サイトで公表する。努力義務ですが、採用ブランディングにも効きます。
ガイドライン改正で抑えておきたいこと
同一労働同一賃金のガイドライン改正で押さえておきたいことを記載します。
正社員側の待遇差を引き下げることは原則NG
正社員と非正規社員との間に待遇差が生じていて、その待遇者を非正規社員の待遇改善ではなく、正社員の待遇悪化で解消しようと考える方がいるかもしれません。
これは原則NGです。
労働契約法により、就業規則の労働者にとって不利益に変更すること(不利益変更)は、以下の要件が必要になります。
- 原則→労働者の合意があれば変更可能
- 例外→「変更後の規程の周知ができている」かつ「不利益の程度、変更の必要性、変更内容の相当性、労働組合等との交渉の状況」を合理的であれば変更できる
つまり、労働者の待遇を引き下げる方がより会社にとっては面倒で複雑であり、訴訟リスクが高まります。
回避すべき内容です。
無期雇用のフルタイム契約社員の取り扱い
パートタイム・有期雇用労働法は、無期雇用のフルタイム契約社員には適用されていません。
しかし、同一労働同一賃金の観点で、パート社員や契約社員は対応するのに無期雇用のフルタイム契約社員を無視することは社内風土を守るという観点でも難しいでしょう。
そのため、ガイドラインにも「無期雇用フルタイム社員についてもガイドラインの趣旨を考慮すべき」ことを留意するようにあります。
今回の改正のタイミングで会社の社員区分別に見直すことが望ましいと言えます。
「正社員の定着を図る」でなんとかなる?
同一労働同一賃金の待遇差解消の観点で、正社員と非正規社員の待遇差は「正社員の継続勤務を図るため」「正社員の人材確保のため」と考える会社さんも多いでしょう。
確かに、正社員を優遇することで定着を図る。それにより待遇に差があるから同一労働同一賃金の対象外であると考えるのもわかります。
ですが、待遇差が合理的であるかどうかは待遇の差の性質や目的に照らして判断されるものであるため、必ずしも正社員の人材確保や定着が理由として成立しない可能性が高いです。
そのため、正社員の人材確保や定着を図る以外の側面で棚卸しすることが重要です。
まとめ:同一労働同一賃金で立てるべき本当の問い
同一労働同一賃金のガイドライン改正についてまとめました。
多くのことが要求されているように見えて、本質は一つです。
「誰に」「何の目的で」その手当や福利厚生を設定していますか?
そしてこの問いは、労務だけにとどまらない問いでもあります。
私たちは誰にどのようなサービスを届けているのか?
その時、どのような組織体制になっているのか?
私たちが届けるサービスはどのような人が届けているのか?
私たちの組織がどのような組織なのか、何を体現しているのかを言語化できた時、自然と給与の支払い方も決まってきます。
Office LINQCULでは、同一労働同一賃金の観点で見直すべき社員区分の定義や賃金の支払い方の定義に加え、どのような組織でありたいか?本当に達成したいことは何か?という理想状態から棚卸しをして制度設計をご支援させていただきます。
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