Office LINQCULの正岡です。
兵庫県西宮市で社会保険労務士と認知科学コーチをしています。
華金よりも華月でしょ!と月曜日が楽しみな社会にすべく労務相談や規程改定
認知科学コーチングの観点を用いた研修や対人支援を実施しています。
今回は、シフト制勤務の会社さんの労働基準法の対応や雇用管理についてまとめます。
シフト制勤務のある経営者・人事担当の方に、まず一つだけ聞かせてください。
「来月シフトに何日入れるか、何を根拠に決めていますか?」
多くの現場で返ってくる答えは、「その月の忙しさ次第」「店長の采配」です。
それ自体は悪くありません。
シフト制はもともと、繁閑に合わせて柔軟に人を動かせるのが強みだからです。
ただ、その「柔軟さ」を法律のルールから外れたまま運用していると、ある日いきなり、未払い賃金や年休(年次有給休暇)のトラブルとして跳ね返ってきます。
2026年6月、厚生労働省が「シフト制で働く人の雇用管理の留意事項」を改正しました。
今回のポイントはパートやアルバイトの年次有給休暇まわりです。
よくシフト制を用いる業態(飲食業や介護福祉業界の皆様)の方は特に
この記事を最後まで読んでほしいと思っています。
今日は、シフト制と労働基準法の関係を、実際に動ける形に落とし込んでいきます。
【この記事で獲得できること】
- シフト制勤務が労働基準法においてどのような関連を示すか明確になる
- シフト制勤務を運用する上で法令違反にならないための運用が明確になる
※ この記事は厚生労働省「いわゆる『シフト制』により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」(令和4年1月7日/改正 令和8年6月19日)に基づいています。
「シフト制」とは何か

「うちはシフト制」と言うとき、実は二つの違うものが混ざっています。
厚労省の留意事項は、シフト制をこう定義しています。
「労働契約の締結時点では労働日や労働時間を確定的に定めず、一定期間(1週間、1か月など)ごとに作成される勤務割や勤務シフトなどにおいて初めて具体的な労働日や労働時間が確定するような形態」
つまり、「契約の時点では、いつ・何時間働くかを決めていない。シフト表を作って初めて確定する」働き方です。飲食や介護業界のパート・アルバイトの多くがこれに当たります。
一方で、留意事項はこうも書いています。
三交替勤務のような、年や月などの一定期間における労働日数や労働時間数は決まっていて、就業規則等に定められた勤務時間のパターンを組み合わせて勤務する形態は除きます。
つまり——
- 狭義のシフト制:契約時点で日数・時間が未確定。シフト表で初めて決まる(今回の主役)
- 交替勤務:日数・時間の枠は決まっていて、パターンを組み合わせるだけ
と分類できます。
自社がどちらかを、まず見極める必要があります。
シフト制のデメリット
シフト制は柔軟に管理者の采配で勤務日を決めることができる一方、以下のようなデメリットが発生しやすいです。
- 使用者の都合により、労働日がほとんど設定されない
- 労働者の希望を超える労働日数が設定される
これらの内容により労働紛争が発生することもあります。
シフトの決定権が事実上お店側にある。
だからこそ、ルールなしで運用すると一方的になりやすいという構造を抱えています。
シフト制でやりがちな、4つの労働基準法違反
現場でよく見かける「ちょっとまずいかも」なパターンを、
留意事項に照らして4つまとめました。
1.労働条件通知書に「始業終業時刻はシフトによる」としか書いていない
これは留意事項にはっきり記載があり、アウトになり得ます。
労働契約の締結時点において、すでに始業及び終業時刻が確定している日については、その日の始業及び終業時刻を明示しなければなりません。
労働条件通知書等には、単に「シフトによる」と記載するのでは足りず、労働日ごとの始業及び終業時刻を明記するか、原則的な始業及び終業時刻を記載した上で労働契約の締結と同時に定める一定期間分のシフト表等をあわせて労働者に交付するなどの対応が必要です。
2. 休日の考え方をどこにも書いていない
労基法第35条は「毎週少なくとも1回又は4週間を通じて4日以上の休日」を義務づけています。契約時に休日が定まっていなくても、「シフト次第だから書けない」は労基法違反となります。
3. 6時間超の勤務なのに休憩を45分きっちり取らせていない
労基法第34条により、6時間超で少なくとも45分、8時間超で少なくとも1時間の休憩が必要です。
休憩=労働から解放されている時間のこと。
そのため、いわゆる「手待時間」(いつ呼ばれるか分からず待機している時間)や来客対応の時間は休憩に含められないと明言しています。「ヒマな時間を休憩にカウント」や「電話番をしておいて」は法律上は休憩とはみなされません。
4. パート・アルバイトに有給休暇を付与していない
最も多い誤解です。「バイトに有休はない」は完全な間違いとなります。
「シフト制労働者の場合であっても、「労働者」である以上、雇入れの日から起算して6か月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤したときは年次有給休暇の付与の義務があります。そして今回の改正で、この年休の扱いがさらに具体化されました。次章で詳しく見ます。
シフト制における労働基準法の適用——「シフトだから」を免罪符にしない
これまでの4つの事項を一言でまとめると、原則はひとつです。
シフト制であることは、労働基準法の適用を免れる理由にはならない。
厚生労働省の文書でも、留意事項の中で「シフト制労働者の場合であっても」と繰り返されているのがその象徴です。
主要な適用関係を一覧にします。
| カテゴリ | 注意点 |
| 労働条件の明示 | 始業終業時刻・休日等を書面で明示。シフト制なら考え方や当面のシフト表も交付 |
| 労働時間 | 1日8時間・週40時間の法定労働時間を遵守して所定労働時間を設定 |
| 休憩 | 6時間超で45分、8時間超で60分。手待時間は休憩に含めない |
| 休日 | 毎週1回、または4週4日は最低限 |
| 時間外・休日労働 | 超えるなら36協定+届出が必須 |
| 年次有給休暇 | 6か月継続・8割出勤で付与。日数の少ない人も比例付与 |
| 休業手当 | 会社都合で休ませたら平均賃金の6割以上。シフトを一方的に削るときは要注意 |
| 解雇予告 | 解雇は30日前予告か、平均賃金30日分以上の予告手当 |
このうち、休業手当(第26条)は見落とされがちです。法律上、「使用者の責に帰すべき事由により労働者を休業させた場合」には、休業手当の支払が必要です。その「責に帰すべき事由」は故意・過失に限らず「経営、管理上の障害なども含まれます」としています。
会社都合でシフトをゼロにしたら、休業手当が発生し得る可能性があります。
2026年6月改正で追記されたシフト制の留意事項

今回の改正の焦点は、年次有給休暇です。次の3点を具体的に書き加えました。
1. 所定労働日数に応じた「比例付与」の日数を明記
「所定労働日数が少ない労働者(1週間の所定労働日数が4日以下又は1年間の所定労働日数が216日以下で、かつ1週間の所定労働時間が30時間未満の労働者)」には、日数に応じた年休を与えなければなりません。
具体的には以下の通りです。

週1日の勤務だろうと6ヶ月の継続勤務があり、出勤率8割を超えていれば有給休暇の付与の対象となります。
2. 「所定労働日数を算定しがたい場合」はどうしたら?
シフト制における有給休暇の付与で悩むところは、
「いや、週所定労働日数もシフトによって決まってない・・・」
ではないでしょうか?
日数が毎月バラバラで、「所定労働日数」がそもそも決まっていないの取扱いは以下のように明記されました。
- 雇入れ6か月経過後の付与:「雇入れから6か月間の労働日数の実績を2倍した日数」を1年間の所定労働日数とみなす
- 雇入れ1年6か月経過後以降:「前年の労働日数の実績」を用いる
つまり「日数が決まっていないから有休を出せない」は理由にならず、実績から逆算して付与してください
というルールが明文化されました。
3. 年休取得日に支払う賃金の計算方法を明記
有休を取った日に、いくら払うか。以下のように明記されました。
- 時給の場合:時給 ×「年次有給休暇取得日における所定労働時間として定められている労働時間」
- 日給の場合:その日給の金額
あわせて、年休が10日以上付与される人には、そのうち「5日」を1年以内に時季を定めて取得させる義務(年5日取得義務)も、シフト制労働者に等しく適用されます。
まとめると、今回の留意事項の改正は「新しい義務が増えた」というより、もともとあった法律上の年休のルールを、シフト制の現場に特化して具体的な話として明記した内容です。
Q&A——現場でよく出る5つの疑問
Q1. うちのアルバイトは週2〜3日で日数もバラバラ。それでも有休を出すんですか?
出します。あらかじめ所定労働日数を定めていない場合に、そのことを理由に年次有給休暇を付与しないことは認められません。日数が定まらないなら、雇入れから6か月の労働日数の実績を2倍した日数などから算定して付与します。
Q2. 忙しくないから、来月そのパートさんのシフトをゼロにしていいですか?
双方合意の上でできているかどうかが重要です。
元々の労働契約で勤務することが決まっていたにも関わらず、会社都合でシフト0にした場合、休業手当の支給義務は発生しえます。
慎重な判断が必要になります。
Q3. 労働条件通知書、「シフトによる」じゃダメなんですか?
確定している日は始業終業時刻を明記するか、当面のシフト表を一緒に渡す。
休日は少なくとも「毎週1回か4週4日」を満たす考え方を示すことが必要です。
Q4. シフトはこちらが決めて一方的に通知していますが、問題ありますか?
望ましくない、とされています。
ベストなやり方は
シフト希望を回収→シフト発表(日程調整ができる余裕を持った発表)→シフト変更の場合の手続きの明確化
と言われています。
Q5. パート・アルバイトも社会保険に入れる必要がありますか?
要件次第です。
健康保険・厚生年金は、週の所定労働時間20時間以上・月額賃金8.8万円以上・学生でない等の要件を満たすと対象になります(企業規模の基準は段階的に引き下げ中)。
雇用保険は原則、週20時間以上かつ31日以上の雇用見込みで加入。なお雇用保険の「週20時間以上」は令和10年(2028年)10月から「10時間以上」に引き下げ予定で、短時間のパートも今後さらに対象が広がる予定です。
今日からやる、6つのアクションプラン
これまで読んできたことを今日中に着手できるアクションプランを6つ紹介します。
1. 自社が今回の論点であるシフト制に該当することを認知する
まずはシフト制に該当するかどうかの確認から始まります。
2. 労働条件通知書を点検・差し替える
「シフトによる」だけになっていないか。始業終業時刻(または当面のシフト表)、休日の考え方を明記した様式になっているかチェックする。
3. パート・アルバイト全員の有休管理簿を作成する
勤続月数と週の所定労働日数(決まっていなければ実績)から、比例付与の日数を一人ずつ算出し、有休管理をする。
4. 「所定労働日数が定まらない人」の付与日数を実績から計算する
有給休暇の付与日数を計算し、実績とのギャップや付与できていない人がいるかどうかを確認します。
5. 年5日取得義務の対象者を洗い出す
年休が10日以上付与される人をリスト化し、1年以内に5日取れているかを管理する。
6. シフトの決定・変更ルールを一枚にまとめる
意見聴取のタイミング、シフト通知の期限、変更の手続き。規程など社内周知する準備をする。
まとめ——先にgiveできるのはどっち?

ここまで、国が要求していることをまとめてきました。
これをお読みになった方の中には
・なんでそこまでせなあかんの?
・社員がパフォーマンス上げてくれたら有休も有休も余裕もってとってもらえるけど、今そのフェーズじゃないんだが。
・身動きとりにくくなってほんまだるい。
・シフト制なんやから自分で休み希望出してるのに有休取る必要ないやん
と思っておられる方もいらっしゃると思います。
ですが、ここで少し視点を変えてみるといかがでしょうか?
- どのようにしたら、社員の有給取得率が80%以上になり、かつ今よりも売り上げが圧倒的に向上する組織体制にできるだろうか?
- 〇〇業界(自分たちが所属する業界)でシフト勤務のパートさん・バイトさんの働きやすさランキング全国1位の会社はどのような会社だろうか?
- 売上も働きやすさも全て全部取りに行くにはどんなアプローチがあるだろうか?
現状の具体の思考に落ちてしまうと、同じような日々が続いてしまいます。
目指すものを掲げ、「本気で」取りに行くと決めるとこれまでとは違ったアクションが見えてくるかもしれません。
もし、現状を打破する目標設定に悩んだり、実際の具体の制度設計に悩まれる方がいらっしゃったらぜひお問い合わせください。
Office LINQCULではコーチングのノウハウを用いて、会社の理想や方針の具体化、思想の設計から、人事労務における制度の実装、運用まで一気通貫でご支援します。