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残業45時間を超えたら?残業時間ごとの会社の対応まとめ

残業45時間を超えたら?残業時間ごとの会社の対応まとめ

社会保険労務士/認知科学コーチの正岡です。

「月曜日が楽しみになる会社の実現」を理念に兵庫県西宮市を中心に企業様のご支援をしています。

今回は残業時間45時間を超えたら?というテーマで、会社の対応をまとめます。

残業を減らすための施策をたくさん考えますが、

「実際に残業時間が発生した時会社は何をしなければならないのか?」

を労務の観点で検討できるとよりリスクが低減できます。

この記事では、労働時間の原則と例外を明らかにし、
残業時間別に対応しなければならないことや
今後何に気をつけなければいけないのかをクリアにします。

【この記事で獲得できること】

  • 労働時間の定義を再認識して、自社で労働時間なのか曖昧な点が明確になる
  • 36協定の意図意味が明確になる
  • 残業時間の基準時間ごとに何に気をつけなければならないか

労働時間とは?

そもそも、「労働時間」の定義は労働基準法の条文には記載がなく、過去の最高裁判例(三菱重工業長崎造船所事件/最高裁判所平成12年3月9日判決)で以下のように記載されています。

労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のこと。

労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではない。

この判例の内容から、争点になりやすい「着替え」「研修」「出張」については、以下のように整理されています。

着替えの時間は労働時間?

制服に着替えることに関しては、具体的な状況によって異なります。

過去の判例で言うと

  • 会社が制服の着用を義務付ける
  • 制服での通勤を禁ずる(会社で着替えることを義務付ける)

の要素を満たす時、労働時間として認められると最高裁は判断しました。

一方で、制服の着用が任意であったり、制服を着用して通勤し出勤することが認められている場合は、出社して着替えている時間を労働時間とは解さないとしています。
(厚生労働省リーフレット:労働時間の考え方:「研修・教育訓練」等の取扱い)

研修を受講している時間は労働時間?

研修を受講している時間も一律の判断ではなく、個別事情により異なりますが観点は2点です。

  • 業務上必要な研修を受講していること
  • 参加が使用者から強制されていること

この2点を満たしていると労働時間として解される可能性が高いです。

例えば、会社で安全衛生の研修を受講させる場合は労働時間になる可能性が高いです。

一方で社員が自主的に業務後に勉強会を行うことは労働時間にはなりません。

他、例えばこのような棲み分けが可能です。
(参考:厚生労働省リーフレット 労働時間の考え方:「研修・教育訓練」等の取扱い)

  • 労働時間に含まれない場合
    • 終業後の夜間に行うため、弁当の提供はしているものの、参加の強制はせず、また、参加しないことについて不利益な取扱いもしない勉強会
    • 労働者が、会社の設備を無償で使用することの許可をとった上で、自ら申し出て、一人でまたは先輩社員に依頼し、使用者からの指揮命令を受けることなく勤務時間外に行う訓練。
    • 会社が外国人講師を呼んで開催している任意参加の英会話講習。なお、英会話は業務とは関連性がない。
  • 労働時間に含まれる場合
    • 使用者が指定する社外研修について、休日に参加するよう指示され、後日レポートの提出も課されるなど、実質的な業務指示で参加する研修。
    • 自らが担当する業務について、あらかじめ先輩社員がその業務に従事しているところを見学しなければ実際の業務に就くことができないとされている場合の業務見学。

直行直帰や出張で移動している時間は労働時間?

直行直帰や出張は業務の都合による移動なので一見すると労働時間に含まれますよね。

ですが、以下の要件を満たしている場合は労働時間に該当しません。

  • 移動中に業務の指示を受けていない
  • 実際に業務に従事していない
  • 移動時間に関して指示を受けず、移動中は自由が保障されている

そのため、月曜日に出張のため、前日の日曜日に移動して前泊することも
上記要件に該当していれば労働時間には含めません。

仮眠・待機時間は労働時間?

仮眠や待機時間は以下の要件を満たしていれば労働時間には含めません。

  • 電話等に対応する必要がない
  • 実際に業務を行うことがない

例えば担当で割り振られていて、退勤時に会社用の携帯電話を持って退社するも、その後自宅での過ごし方に自由が保障されている場合は労働時間とはいえないことになります。

Tips 医療業界のオンコール対応はどうなる?

ここで論点になってくるのが、医療業界におけるオンコール対応です。

個別事案の具体的な内容により判断が分かれますが、以下の論点を中心に、上記の「労働からの解放が保障されていたか」を確認しています。(参考:医師の働き方改革)

  • 呼び出しの頻度
  • 呼び出された場合にどの程度迅速に病院に到着することが義務付けられているか
  • 呼び出しに備えてオンコール待機中の活動がどの程度制限されているか

例えば、「医療法人社団誠馨会事件/令和5年2月22日」では

  • 月に4回あるオンコール待機期間中、電話がないのは1回のみ
  • 日祝の場合は複数回の架電があるが、オンコール待機の時間に対し電話の件数が必ずしも多いとはいえない
  • 初期対応の指針が明確化されており、指針に該当しない場合に電話が来るなどのルール設定

などの複合的な要因を鑑みて、労働時間とはいえないという判断になりました。

時間外労働とは?

労働基準法32条は労働時間について次のように定めています。

使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。(参考:e-Gov 法令検索:労働基準法)

そして、労働基準法32条違反の場合は「6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金」という罰則がついています。

つまり、原則は1日8時間、週40時間以内に労働時間をおさめなければなりません。

加えて、労働基準法37条の割増賃金の支給が求められます。

しかし、この労働基準法32条の条文に関し、さまざまな観点で例外ルールが存在します。

  • 柔軟な労働時間制度(変形労働時間制、フレックスタイム、みなし労働時間制)
  • 労使協定の締結や非常時災害による時間外労働
  • 時間外労働の適用除外(労働基準法41条による管理監督者など)

今回は労使協定の締結による時間外労働について言及します。

36協定とは?

1日8時間、週40時間を超える労働や法定休日の労働は原則として禁止されています。

しかし、時間外・休日労働に関する労使協定を締結することによって、
会社は時間外・休日労働に対する割増賃金を支払うことを条件に時間外・休日労働をさせることができます。

労働基準法36条に定められた労使協定から、36協定と呼ばれています。

36協定の成立要件

36協定を法的に有効な形で締結するには

  • 労働組合もしくは、民主的な方法で選出された過半数労働者の代表と協定を締結
  • 労働基準監督署に届け出る

ことによって成立します。

※締結しているだけでは有効なものではなく、届け出ることで初めて有効な36協定となります。

36協定に定めないといけないもの

36協定には以下の内容を定めることが必要です。

  • 労働時間を延長し、または休日に労働させることができることとされる労働者の範囲
  • 対象期間(1年に限る)
  • 労働時間を延長し、または休日に労働させることができる場合
  • 対象期間における1日、1ヶ月及び1年のそれぞれの期間について
    労働時間を延長して労働させることができる時間または労働させることができる休日の日数
  • 労働時間の延長及び休日の労働を適正なものとするために必要な事項として厚生労働省令で定める事項
    • 1年の起算日
    • 限度時間を超えて労働させることができる場合
    • 健康福祉確保措置
    • 割増賃金の率
    • 限度時間を超えて労働させる場合の手続き

上記内容を「事業所単位」で締結します。

そのため、大阪と東京に事業所がある場合は、大阪と東京どちらでも締結し、届出が必要です。

36協定を定めることでどうなる?

36協定を締結することによって、時間外労働の規制が一部緩和されます。
無制限に残業ができるわけではありません。

36協定を締結すると上限
月の時間外労働45時間
年の時間外労働360時間

上記の時間を超えて時間外労働させることは原則できません。

しかし、繁忙期などの臨時的な特別事情を考慮した「特別条項」を締結することで
上記の上限をさらに超えることができます。

特別条項を締結すると上限
1ヶ月の時間外労働+休日労働合わせて100時間未満
年間の時間外労働720時間以下(平均60時間以下)
該当月の前1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月のそれぞれの期間における時間外・休日時間外労働の平均平均80時間以下
月45時間を超えて時間外労働できる月数6回まで

時間外労働の上限規制で会社が確認すべき義務

36協定によってさまざまな数字(上限時間)が出てきました。

多くの会社が気にするのは「あいつ、今月何時間残業してんだ?」です。

それは、残業に対するアウトプットの量と質で評価が決まる観点でもあり、
不要な人件費が発生していないかを確認するためでもあります。

ですが、労働・安全衛生の観点を気にすることができれば
会社の財務リスクだけではなく、法的リスクをも下げることができます。

残業時間によりどのような確認事項が出てくるかを整理します。

※ここでいう残業時間は「法定外残業」を指します。

残業30時間を超える場合

残業30時間を超えても、単月で見ると法令違反を犯しているわけではありません。

しかし、毎月30時間超の残業時間が1年間行われると、30×12ヶ月=360時間を超えることとなり、
通常の36協定の1年間の上限時間外労働時間を超過することになります。

36協定違反には罰則がつくため、労働基準法119条に基づき
「6ヶ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金」が科せられる可能性があります。

単月で見て安心というわけではないので注意が必要です。

また、残業時間が36協定の範囲内であっても、会社は労働者に対する安全配慮義務(労働契約法)を負います。
残業時間が長くなればなるほど過労死との関連性が強まることに注意が必要です。

残業45時間を超える場合

残業45時間を超えると、通常の36協定だけでは法令違反となります。
特別条項を締結していないと45時間を超えて社員に働いてもらうことはできません。

また、特別条項を加えるということは、社員の健康福祉に関する措置を検討し確保・実行する必要があります。

健康福祉確保措置には以下の選択肢があります。

  • 医師による面接指導
  • 深夜業の回数制限
  • 就業から始業までの休息時間の確保(勤務間インターバル)
  • 代償休日・特別な休暇の付与
  • 健康診断
  • 連続休暇の取得
  • 心とからだの相談窓口の設置
  • 配置転換
  • 産業医等による助言・指導や保健指導

会社は、健康福祉確保措置について、実施状況に関する記録を36協定の期間満了後3年間保存しなければなりません。

残業が60時間を超える場合

残業が60時間を超えると、これまでの措置に加えて、60時間を超えた部分の時間外労働に対し割増賃金の率が25%→50%になります。

例えば、時給2000円の人が残業75時間した場合

  • 60時間まで→2000円×1.25×60時間=150,000円
  • 60時間を超えて75時間まで→2000円×1.5×15時間=45,000円

となり、残業代だけで195,000円も支給が発生します。

人件費を圧迫する大きな要因となります。

割増率アップの代替措置としての代替休暇の取得

1ヶ月60時間を超える残業を行った労働者の健康を確保する目的で、労使協定を締結することで
60時間を超える部分の割増賃金の代わりに有給の代替休暇を付与することができます。

例えば、時間外労働を月80時間行った場合で、割増賃金の割増率が25%→50%になった場合

60時間を超える20時間分に対して、割増賃金の引き上げ分25%の支払いの代わりに
20時間×(50%-25%)=5時間の有給の休暇を付与することも可能です。

※あくまで割増率の引き上げ分のみに対する措置であるため、1.25の割増賃金の支給は必要です。

80時間を超える場合

残業時間が80時間を超えると労働基準法、労働安全衛生法、労災保険法の3つの観点で注意点が出てきます。

労働基準法での観点

労働基準法の観点では、36協定の特別条項を締結していたとしても、
時間外労働と休日労働の合計が直前の2〜6ヶ月のいずれにおいても80時間以下でなければなりません。

単月で80時間を超えることに違法性はありませんが、翌月以降の上限を圧迫します。

当然、45時間を超えた時に対応が必要な健康確保措置も継続して対応します。

労働安全衛生法での観点

労働安全衛生法の観点では、時間外が80時間を超えることにより疲労の蓄積が認められる人に対して
以下の対応が必要です。

  • 時間外労働が80時間を超えていることを本人にアナウンス
  • 産業医に残業80時間を超えた労働者の氏名や時間外労働について共有
  • 会社の産業医が医師の面接指導を受けることを勧奨する
  • 労働者が医師の面接指導を受けることを望んだときに面接指導を実施する(以下項目を確認します)
    • 勤務状況
    • 疲労の蓄積について
    • メンタルの状況

面接指導に対し、会社は医師の意見を聞いた上で、必要がある場合は

  • 就業場所の変更
  • 作業の転換
  • 労働時間の短縮
  • 深夜業の回数の減少

などの措置を講じ、労働安全衛生法に基づく衛生委員会で共有が必要です。

労働者災害補償保険法での観点

労災保険法の観点では、労災の認定基準が80時間というラインがあります。

脳・心臓疾患の認定基準は発症前2〜6ヶ月で1ヶ月80時間を超える時間外労働がある場合に
業務の内容と発症との関連が強いと判断されます。(いわゆる過労死ライン)

具体的な認定基準については厚生労働省のページを参照ください。

残業時間が100時間を超えたら

残業時間が100時間を超えると、36協定の特別条項を締結していても労働基準法違反となり、罰則が発生します。(罰則の内容は45時間を超えた時に記載した内容と同様です)

特別条項の内容は100時間「未満」であることを求めているため、100時間ちょうどでも違反となります。

また、労働安全衛生法の対策も引き続き必要です。

労災保険法の観点では、脳・心疾患や精神障害において業務と発症の関連が強いと評価されます。

会社が安全配慮義務違反に問われる可能性もあり、民事上の損害賠償が発生する恐れもあります。

2026年9月からの指導見直し

厚生労働省は、2026年8月19日に時間外労働を巡る指導のあり方について
見直しをすると発表しました。

指導のあり方変更内容これまでの対応これからの対応
時間外労働45時間以内の指導一律で45時間を超えないように指導一律での指導を取りやめる
(違法な長時間労働の恐れがある場合は引き続き厳しく対応)
健康確保措置の実施運用確認していたが重要視されていない実施運用されているかを重点的にチェック

つまり、「残業時間に対する規制が緩和された」のではなく、「指導の観点が変わった」ことになります。

法律は何も変わっていないので、これまで通り時間外労働については厳しく指導されるでしょう。

まとめ:労働時間の適正把握が改善の一歩

労働時間を適正に把握することは自社を診断する上でとても重要な要素です。

壊れた体温計を使っても医師は適正な予測、診断をすることができません。

特に労働時間は、事業組織を運営する上での重要なファクターです。

まずは正確な労働時間管理を実施し、36協定の内容確認から運用体制を見直すことをお勧めします。

現状を確かめるためのチェックリストは以下のとおりです。

  • 管理職を含め、労働時間を客観的な方法で把握できているか
  • 過半数代表者を適正に選出し、36協定を特別条項含め適正に運用できているか
  • 特別条項の健康福祉措置を正しく設定し、適正に運用し記録できているか
  • 割増賃金の計算に誤りがないか
  • 時間外労働を抑制し、生産性の高い組織を作るための活動ができているか

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